KeePassとは?実は1つのソフトではありません【本家・XC・スマホ版の違い】

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KeePassは、完全無料・広告なし・サブスクなしのパスワード管理ソフトです。クラウドを使わず、自分のパソコンの中だけでパスワードを管理できます。

ただし始める前に知っておくべきことがあります。「KeePass」は1つのソフトの名前ではありません。複数の別々のプロジェクトが同じ名前で呼ばれています。

公式サイトを確認したところ、スマホ用のアプリは1つも公式のものがありませんでした。Android用で6つ、iPhone用で6つの「非公式移植版」が並んでいます。

これは欠点というより設計思想の違いです。KeePassは「全部を自分で管理したい人」のための道具で、その代わりに選択と手間が利用者側に来ます。ここを理解せずに始めると必ず戸惑います。

検証条件:2026年7月26日に、KeePass公式サイト(keepass.info)のトップページとダウンロードページ、およびKeePassXC公式サイト(keepassxc.org)を実際に開いて記載内容を確認しました。確認時点の最新版はKeePass 2.61.1(2026年5月1日リリース)です。なお私はKeePassおよびKeePassXCをインストールしておらず、公開情報の確認にとどまります。

「KeePass」と呼ばれているものが複数ある

まずここを整理しないと話が始まりません。

名前 立場 対応OS
KeePass 2.x
(2.61.1)
本家・現行 Windows 7〜11
Linux・macOSはMono経由
KeePass 1.x
(1.43)
本家・旧系統
(今も更新されている)
Windows
KeePassXC 別プロジェクト
(有志による派生)
Windows / macOS / Linux
すべてネイティブ対応
スマホ用アプリ すべて非公式移植版 Android / iOS

本家はWindows向けです

KeePass公式のダウンロードページには、対応OSが「Windows 7 / 8 / 10 / 11、Mono(Linux、MacOS、BSD、…)」と書かれていました。

Mono経由で動くとはいえ、MacやLinuxで使うなら実質的にKeePassXCを選ぶことになります。公式サイト自身も、Linux・macOS向けの選択肢としてKeePassXCを挙げています。

KeePassXCは国の機関の認証を受けている

KeePassXC公式サイトには、次の記載がありました。

「KeePassXCはフランス国家サイバーセキュリティ庁(ANSSI)からセキュリティビザを授与されています。」
― KeePassXC公式サイトより

派生プロジェクトでありながら、公的機関の認証を受けています。ライセンスはGPLv3で、コードはGitHubで公開されています。

日本語の記事では「KeePass」とだけ書かれていることが多いのですが、実際にMacで使おうとすると本家は選べません。この違いを知らずにダウンロードページに行くと、Windows用のexeしか見つからずに詰まります。

スマホ用は全部が「非公式」

ここが実務上いちばん効いてきます。

KeePass公式のダウンロードページには「Contributed/Unofficial KeePass Ports(有志による非公式移植版)」という見出しで、次のアプリが列挙されていました。

プラットフォーム 列挙されているアプリ
Android KeePassDroid / KeePass2Android / KeePassDX / KeepShare / JKeePass / OneKeePass
(6種類)
iPhone / iPad OneKeePass / KeePassium / Strongbox / KeeForge / PassDrop 2 / KyPass
(6種類)
ブラウザ KeeWeb / Kee Vault
コマンドライン KPCLI / KPScript

公式のスマホアプリは存在しません。スマホで使うなら、この中から自分で選ぶことになります。

これが意味すること

  • 選定が自己責任になります。 どれが安全でよく保守されているかを、自分で判断する必要があります
  • パスワードのデータベースを第三者製アプリに開かせることになります。オープンソースとはいえ、開発者はKeePass本家とは別の人です
  • アプリごとに使い勝手が違います。 自動入力の対応状況も異なります
誤解のないように書くと、これらのアプリが危険という話ではありません。KeePassDX、KeePassium、Strongboxなどは広く使われており評価も高いです。ただ「公式が用意したものを入れれば終わり」ではないという点を、始める前に知っておく必要があります。

仕組み:ファイル1つを自分で持ち運ぶ

KeePass系に共通する仕組みはシンプルです。

  1. パスワードを1つのデータベースファイル(.kdbx)にまとめる
  2. そのファイルをマスターキーで暗号化する
  3. ファイルは自分のパソコンの中に置く

公式の説明では「マスターキー1つだけ覚えれば、データベース全体を開ける」とされています。ここまではProton PassやBitwardenと同じ考え方です。

決定的に違うのは「同期」

KeePassにはサーバーがありません。KeePassXC公式も「リモートサーバーにデータは一切保存されない」「クラウドなし、広告なし、サブスクなし」と明記しています。

その代わり、複数の端末で使いたい場合は自分で同期を設計する必要があります。

やること KeePass Proton Pass / Bitwarden
複数端末での同期 自分でやる
(クラウドにファイルを置くなど)
自動
バックアップ 自分でやる サーバー側にある
ファイルを失ったら 復旧できない ログインし直せば戻る
事業者にデータを預けるか 預けない 預ける(暗号化済み)
料金 完全無料 無料プランあり
よくある運用は「.kdbxファイルをGoogleドライブやDropboxに置いて同期する」ですが、これをやると結局クラウド事業者にファイルを預けることになります。暗号化されているので中身は読まれませんが、「クラウドを使わない」という利点は半分失われます。
同じ構造の話はCryptomatorとは?にも書きました。

2台以上で編集すると競合する

ファイルベースなので、2台の端末で同時に編集すると衝突します。クラウド同期に任せていると、片方の変更が消える事故が起こりえます。

これは仕組み上の制約で、回避するには「編集する端末を1台に決める」「必ず閉じてから他の端末で開く」といった運用ルールが必要になります。

Proton Passとの比較

思想が正反対なので、比べる軸をはっきりさせます。

KeePass / KeePassXC Proton Pass
考え方 全部自分で管理する 暗号化した状態で預ける
料金 完全無料(有料プランなし) 無料プランあり
ソースコード 公開(GPLv3) 公開(GPLv3)
同期 自分で設計 自動
スマホアプリ 非公式版から選ぶ 公式アプリ
メールエイリアス なし 10個が内蔵(無料)
他人との共有 ファイルを渡す(実質困難) 2人まで(無料)
事業者への依存 ゼロ あり
導入の手間 大きい 小さい

KeePassにしかない価値

事業者がいなくなっても使い続けられます。これは他にない強みです。

Proton PassもBitwardenも、会社がサービスを終了したら移行が必要になります。KeePassは手元にファイルがあるだけなので、プロジェクトが止まっても既存のファイルは開けます。

また「どこにも預けたくない」という要求に完全に応えられるのはKeePassだけです。オフラインで完結させられます。

逆に言うと、その代償として同期・バックアップ・アプリ選定・競合対策のすべてが自分の仕事になります。ここを楽しめる人には最良の選択で、面倒だと感じる人には向きません。

どちらを選ぶべきか

条件で整理します。

あなたの条件 選ぶべきもの
事業者にデータを預けたくない KeePassXC
オフラインだけで完結させたい KeePassXC
1円も払いたくない KeePassXC(完全無料)
Windows以外で使う KeePassXC(本家はWindows中心)
スマホでも同じように使いたい Proton Pass(公式アプリがある)
同期を自分で管理したくない Proton Pass
使い捨てメールアドレスも欲しい Proton Pass
家族と共有したい Proton Pass

私の見立て

パソコン1台で完結する人には、KeePassXCは非常に良い選択です。完全無料で、ANSSIの認証も受けており、事業者への依存がゼロです。これ以上求めることはあまりありません。

一方でスマホを併用する時点で、難易度が跳ね上がります。非公式アプリを選び、同期方法を決め、競合を避ける運用を組む必要があります。ここを引き受けたくないなら、素直にサービス型を選ぶほうが結果的に安全です。

身も蓋もない言い方をすると、「運用できないセキュリティは、セキュリティではない」と思っています。KeePassを完璧に運用できる人には最強の道具ですが、途中で面倒になってブラウザ保存に戻ってしまうなら、最初からProton Passのほうがずっと安全です。

他の選択肢も含めて比べたい場合はパスワード管理アプリのおすすめ、Bitwardenとの比較はProton Pass と Bitwarden を比較、1Passwordとの比較は1Password と Proton Pass を比較にまとめています。

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よくある質問(FAQ)

KeePassとKeePassXCは何が違いますか?

別のプロジェクトです。KeePassが本家でWindows中心(Linux・macOSはMono経由)、KeePassXCは有志による派生でWindows・macOS・Linuxすべてにネイティブ対応しています。KeePassXCはフランス国家サイバーセキュリティ庁(ANSSI)のセキュリティビザを受けています。MacやLinuxで使うなら実質的にKeePassXCを選ぶことになります。

KeePassは無料ですか?

完全無料です。有料プランもサブスクリプションもなく、広告も入りません。KeePassXCも同様で、公式に「クラウドなし、広告なし、サブスクなし」と明記されています。

スマホで使えますか?

使えますが、公式アプリは存在しません。KeePass公式サイトが「非公式移植版」として挙げているのは、Android向けが6種類(KeePassDroid、KeePass2Android、KeePassDX など)、iPhone向けが6種類(KeePassium、Strongbox など)です。どれを使うかは自分で選ぶ必要があります。

複数の端末で同期できますか?

自動同期の仕組みはありません。データベースファイルをGoogleドライブやDropboxに置いて同期する方法が一般的ですが、その場合はクラウド事業者にファイルを預けることになります。また2台で同時に編集すると衝突し、片方の変更が消える可能性があります。

データベースファイルを失ったらどうなりますか?

復旧できません。KeePassにはサーバーがなく、データはすべて手元のファイルの中にあります。バックアップは自分で取る必要があります。ここがサービス型のパスワードマネージャーとの決定的な違いです。

Proton PassとKeePass、どちらが安全ですか?

設計思想が違うため単純比較はできません。KeePassは事業者にデータを預けないため依存はゼロですが、同期・バックアップ・アプリ選定をすべて自分で管理する必要があります。運用しきれずに途中で挫折すると、かえって危険な状態になります。確実に運用できるならKeePass、手間を引き受けたくないならProton Passが現実的です。

まとめ

公式サイトを確認した結果をまとめます。

  • 「KeePass」は1つのソフトではありません。 本家2.x・本家1.x・KeePassXCが並存しています
  • 本家はWindows中心。 Mac・Linuxで使うなら実質KeePassXCです
  • KeePassXCはANSSIのセキュリティビザを受けています。 派生ながら公的機関の認証があります
  • スマホ用の公式アプリは存在しません。 Android 6種・iPhone 6種の非公式移植版から自分で選びます
  • 完全無料。 有料プランもサブスクも広告もありません
  • 同期とバックアップは自分の仕事。 ファイルを失えば復旧できません

パソコン1台で完結するなら、KeePassXCは最良の選択のひとつです。事業者への依存がゼロで、完全に無料です。
ただしスマホを併用する時点で、アプリ選定・同期設計・競合対策が自分の仕事になります。そこを引き受けられないなら、無理をせずサービス型を選ぶほうが結果的に安全です。運用できないセキュリティは意味がありません。

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この記事は2026年7月26日にKeePass公式サイトとKeePassXC公式サイトを確認して書いています。確認時点の最新版はKeePass 2.61.1(2026年5月1日リリース)です。私はKeePassおよびKeePassXCをインストールしておらず、使用感まで検証したものではありません。当サイトはKeePassおよび関連プロジェクトとは一切の関係がありません。

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