Gmailをやめたい、あるいは重要なやり取りだけでも別のところに移したい。そう考えたときに問題になるのが、「代替」と紹介されているサービスの多くが、実はGmailと同じ構造を持っていることです。
この記事では、候補になる5つのサービスについて、公式ページで料金・容量・そしてどこまで暗号化されるのかを1つずつ確認しました。特にiCloudメールについては、Appleが自ら公開している暗号化の一覧表で意外な事実が確認できます。
まず整理:Gmailの「何を」解決したいのか
代替を探す動機は、だいたい次の3つに分かれます。ここを決めないと、乗り換えても不満が残ります。
| 動機 | 必要な条件 |
|---|---|
| ①中身をサービス提供者に見られたくない | サーバー側が本文を復号できない設計であること |
| ②登録先に本当のアドレスを渡したくない | 使い捨てできるエイリアスが使えること |
| ③単にGoogleに依存したくない | 暗号化より、移行のしやすさと日本語対応 |
ここで注意したいのが、①と③はまったく別の問題だという点です。GmailからOutlookに移せば③は解決しますが、①は何も解決しません。運営会社がGoogleからMicrosoftに変わるだけです。
5サービスの比較表
2026年7月26日時点で、各社の公式ページに表示されていた内容です。
| サービス | 拠点 | 無料版 | 有料の最安 | 本文の暗号化 | 日本語 |
|---|---|---|---|---|---|
| Proton Mail | スイス | あり(1GB) | 月 ¥499 | ゼロアクセス暗号化 | あり |
| Tuta | ドイツ | あり(1GB) | 月 €3 (約¥510) |
エンドツーエンド | あり |
| iCloud+ | 米国 | なし (無料5GBは別枠) |
月 ¥180 | されない | あり |
| Posteo | ドイツ | なし | 月 €1 (約¥170) |
任意で有効化 | なし |
| StartMail | オランダ | なし (7日間試用) |
月 $4.99 (約¥749) |
PGPベース | なし |
この表だけで、実は候補が絞れてしまいます。日本語で使えるのは上3つだけで、そのうちiCloudメールは本文が暗号化されません。つまり「①を日本語環境で解決する」なら、実質的にProton MailかTutaの2択です。
Proton Mail:無料で始められて、他のサービスも付いてくる
スイス拠点。私が実際に使っているサービスです。
| プラン | 月額(年払い) | 容量 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 無料 | ¥0 | 1 GB | アドレス1つ |
| Mail Plus | ¥499(年 ¥5,988) | 15 GB | アドレス10個、独自ドメイン1つ、エイリアス10個 |
| Unlimited | ¥1,249(年 ¥14,988) | 500 GB | 上記に加えVPN・パスワード管理・ストレージ |
いいところ
- 無料で試せる。 クレジットカードなしで作れるので、合わなければやめられます
- 日本語で使える。 画面もサポートページも日本語です
- メール以外も付いてくる。 Unlimitedならカレンダー・VPN・ストレージ・パスワード管理が同じアカウントに入ります
ひっかかるところ
- 無料版は1GBと少なめ。 添付ファイルが多い使い方だとすぐ埋まります
- メール単体で見ると割高。 Mail Plus単体の年¥5,988は、Tutaより高くつきます
▶ Proton Mailを無料で作る(クレジットカード不要)

Tuta:容量あたりの価格が最も安い
ドイツ拠点。旧称はTutanotaです。
| プラン | 月額(年払い) | 容量 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| Free | €0 | 1 GB | カレンダー1個、ラベル3個 |
| Revolutionary | €3(約¥510) | 20 GB | 追加アドレス15個、独自ドメイン3つ、ラベル無制限 |
| Legend | €8(約¥1,360) | 500 GB | 追加アドレス30個、独自ドメイン10個 |
注目すべきは20GBで月€3という価格です。Proton の Mail Plus が15GBで月¥499なので、容量あたりで見るとTutaの方が有利になります。
いいところ
- 無料版がある。 Protonと同じ1GBから始められます
- 日本語で使える。 公式サイトが日本語表示に切り替わりました
- 本文だけでなく件名も暗号化される設計。 Tutaが以前から強調している点です
ひっかかるところ
- ユーロ建て。 請求額が為替で動きます
- メール以外がほぼない。 カレンダーはありますが、VPNやストレージは付きません
- 日本語の情報が少ない。 困ったときに調べにくいのは実務上の負担になります

iCloud+:Appleの公式表を見ると、メールだけ扱いが違う
iPhoneを使っているなら真っ先に候補になります。料金も安いです。
| プラン | 月額 |
|---|---|
| 50 GB | ¥180 |
| 200 GB | ¥540 |
| 2 TB | ¥1,800 |
全プランに「メールを非公開」(使い捨てアドレス)、カスタムメールドメイン、iCloudプライベートリレーが含まれます。②の「登録先に本当のアドレスを渡したくない」という目的なら、月¥180で解決します。
ただし、本文は暗号化されません
Apple公式のサポート文書「iCloudのデータセキュリティの概要」には、データ種別ごとの暗号化方式が一覧表で公開されています。そこにこう書かれていました。
| データ | 標準のデータ保護 | 高度なデータ保護 |
|---|---|---|
| iCloudメール | 転送中およびサーバ上 (キー保管:Apple) |
転送中およびサーバ上 (キー保管:Apple) |
| 連絡先・カレンダー | 転送中およびサーバ上 (キー保管:Apple) |
転送中およびサーバ上 (キー保管:Apple) |
| 写真・iCloud Drive・メモ | 転送中およびサーバ上 (キー保管:Apple) |
エンドツーエンド (キー保管:信頼できるデバイス) |
| パスワードとキーチェーン | エンドツーエンド | エンドツーエンド |
読み取れることは明確です。「高度なデータ保護」を有効にしても、iCloudメール・連絡先・カレンダーだけはエンドツーエンドになりません。暗号化の鍵はAppleが持ったままです。
まとめると、iCloud+は②のためなら非常に安く、①のためには機能しないという位置づけです。

Posteo と StartMail:日本語がないぶん、条件が合う人向け
残る2つは日本語対応がありません。ただし他にない特徴があります。
Posteo(ドイツ・月€1)
- 月1ユーロ(約¥170)で4GB。 この価格帯では他にありません
- 登録時に個人情報を求められない。 名前も住所も不要と明記されています
- データは任意で暗号化を有効にできる。 ボタン1つで切り替える方式です
- 独自ドメインは使えません。 これは仕様として割り切られています
- 再生可能エネルギー100%で運用していることを前面に出しています
StartMail(オランダ・月.99)
- エイリアスが無制限。 使い捨てアドレスを大量に作りたいならここが強いです
- 20GB、独自ドメイン1つ
- 無料版はありません。 7日間の試用のみです
- 年払いならビットコイン決済に対応しています
Outlook・Yahoo!メールは代替になるか
検索するとよく出てくる選択肢ですが、目的次第です。
| 目的 | Outlook / Yahoo!メールで解決するか |
|---|---|
| ③Googleに依存したくない | 解決する |
| ①中身を見られたくない | 解決しない(運営会社が変わるだけ) |
| ②本当のアドレスを渡したくない | 限定的(エイリアス機能はあるが数に制限) |
「Googleが嫌なのでMicrosoftに移す」は、動機としては十分に成立します。ただしそれをプライバシー対策と呼ぶのは無理があります。大手のメールサービスは、どこも同じ構造でメールを保管しています。
この違いを詳しく整理したものはProton MailとGmailを徹底比較に書きました。
結局どれを選ぶか
条件別に整理します。
| あなたの条件 | 選ぶべきもの |
|---|---|
| まず無料で試したい | Proton Mail か Tuta(この2つだけ無料版がある) |
| メール以外も脱Googleしたい | Proton Mail(Unlimitedで一式そろう) |
| 暗号化メールだけ安く欲しい | Tuta(20GBで月€3) |
| 使い捨てアドレスだけ欲しい | iCloud+(月¥180・iPhoneユーザーなら即戦力) |
| とにかく安く・個人情報を出さず | Posteo(英語) |
| エイリアスを無制限に使いたい | StartMail(英語) |
実務的な進め方としては、全部を一度に移す必要はありません。私も最初は重要なやり取りだけを移して、Gmailは受信専用として残しました。
- まず無料アカウントを作る
- 銀行・行政・仕事など、見られたくない相手のアドレスだけ変更する
- Gmailは転送設定を入れて受信箱として残す
- 問題なければ範囲を広げる
この手順はGmailからProton Mailに移行する方法で画像付きに解説しています。
▶ Proton Mailを公式サイトで見る(無料プランあり)
よくある質問(FAQ)
Gmailの代替で無料で使えるものはありますか?
この記事で扱った5つのうち、無料プランがあるのはProton MailとTutaの2つです。どちらも1GBで、クレジットカードなしで作れます。Posteo・StartMailには無料版がなく、iCloud+も有料プランです。
iCloudメールに移せばGoogleに読まれなくなりますか?
Googleからは離れられますが、暗号化の観点では状況は変わりません。Apple公式のサポート文書によると、iCloudメールは「高度なデータ保護」を有効にしても暗号化の鍵をAppleが保管し続ける扱いです。エンドツーエンドになるのは写真・iCloud Drive・メモなどで、メール・連絡先・カレンダーは対象外と明記されています。
OutlookやYahoo!メールではダメですか?
「Googleに依存したくない」という目的なら十分に成立します。ただし「メールの中身を運営会社に見られたくない」という目的には応えられません。大手のメールサービスは構造が同じで、運営会社が変わるだけになります。
Proton MailとTuta、どちらが安いですか?
メール単体で見るとTutaです。Tutaは20GBで月€3(約¥510)、Proton Mail Plusは15GBで月¥499。容量あたりではTutaが有利です。ただしProtonのUnlimited(月¥1,249)にはVPN・パスワード管理・500GBのストレージが含まれるため、メール以外も移すつもりがあるなら比較の前提が変わります。
日本語で使えるのはどれですか?
Proton Mail、Tuta、iCloud+の3つです。PosteoとStartMailは日本語に対応していません(Posteoは独・英・仏・西、StartMailは英・独)。メールは毎日使うものなので、日本語の有無は思ったより効きます。
Gmailのアドレスは捨てないといけませんか?
いいえ。むしろ最初から全部を切り替えるのはおすすめしません。重要な相手だけ新しいアドレスに変更し、Gmailは転送設定を入れた受信箱として残す方が安全です。過去のメールやサービスの登録先を洗い出すには時間がかかります。
まとめ
各社の公式ページで確認した結果をまとめます。
- 無料で試せるのはProton MailとTutaの2つだけ。 どちらも1GBから、カード不要で始められます
- 日本語で使えるのはProton Mail・Tuta・iCloud+の3つ。 PosteoとStartMailは英語です
- iCloudメールは本文が暗号化されません。 Apple公式の一覧表で、「高度なデータ保護」でも鍵はAppleが保管すると明記されています
- 容量あたりの安さはTuta。 20GBで月€3(約¥510)
- メール以外も含めて移すならProton Mail。 Unlimitedに VPN・ストレージ・パスワード管理が入ります
- OutlookやYahoo!メールは③の解決にしかならない。 運営会社が変わるだけです
迷ったら、まず無料で作れる2つのどちらかを試してみるのが確実です。使ってみて合わなければ、失うものは登録の手間だけです。

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