Proton Pass と Bitwarden を比較【無料版で足りるのはどっち?】

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無料で使える暗号化パスワードマネージャーとして名前が挙がるのが、Proton PassBitwarden の2つです。どちらもオープンソースで、無料版でもパスワードの保存数・端末数に制限がありません。

では何が違うのか。両方の公式ページと機能比較表を1行ずつ確認し、Proton Pass については実際の管理画面も見たうえで整理しました。結論を先に書くと、純粋にパスワード管理だけが欲しいならBitwarden、メールアドレスの使い捨てまで含めてプライバシーを整理したいならProton Passです。

私はProton Unlimitedを契約してProton Passを使っていますが、この記事は「Protonの方が優れている」と言うために書いたものではありません。実際、あとで触れるセキュリティ監査の開示については、Bitwardenの方が明確に上でした。

検証条件:2026年7月26日に、Proton Pass公式の料金ページ(proton.me/pass/pricing)とBitwarden公式の料金ページ(bitwarden.com/pricing)を実際に開き、機能比較表の全行を確認しました。監査については両社のセキュリティ関連ページと公開ブログ、オープンソースの範囲についてはGitHubの公開リポジトリを直接確認しています。Proton Passは私のUnlimitedアカウントで管理画面を確認しました。Bitwardenについては公開情報の確認のみで、アカウントへのログインは行っていません。

結論:どちらを選ぶかは「エイリアスが要るか」で決まる

先に結論から書きます。

こういう人 向いているのは 理由
パスワード管理だけできればいい Bitwarden 無料版の完成度が高く、有料版も年額で安い。自前サーバーでも運用できる
使い捨てメールアドレスも欲しい Proton Pass エイリアスが最初から内蔵されている。無料で10個使える
メール・VPN・ストレージごと移したい Proton Pass Proton Unlimitedに丸ごと含まれる
監査レポートの新しさを重視する Bitwarden 直近も複数の第三者監査を毎年公開している
家族6人で使いたい ほぼ互角 年額がほぼ同じ。他のサービスを使うかで決まる

以下、この判断の根拠を1つずつ確認していきます。

無料版でできること・できないこと

両社の公式ページに書かれている内容を突き合わせました。

項目 Proton Pass 無料 Bitwarden 無料
保存できるパスワード数 無制限 無制限
使える端末数 無制限 無制限
パスキー 対応 対応
ブラウザ拡張・スマホ・デスクトップ あり あり
パスワード生成 あり あり
使い回し・脆弱なパスワードの警告 あり あり
メールエイリアス 10個(内蔵) 外部サービス連携のみ
保管庫(分けて整理する箱) 2個 個人保管庫+無料組織
他人との共有 2人まで 1人まで
内蔵の2FA(認証コード生成) なし(有料) なし(有料)
ファイル添付 なし(有料) なし(有料)
ダークウェブ監視 / 健全性レポート なし(有料) なし(有料)
緊急アクセス なし(有料) なし(有料)
自前サーバーで運用 不可 可能

並べてみると、有料に回している機能がほとんど同じことが分かります。2FAの認証コード生成、ファイル添付、緊急アクセス、漏洩監視。この4点はどちらも無料版では使えません。

「無料でも2FAコードを管理できる」と書かれた記事を見かけることがありますが、両社の公式比較表を見る限り、内蔵の認証コード機能はどちらも有料側にあります。無料で2FAコードを管理したいなら、別の認証アプリを使うことになります。

つまり無料版で本当に差が出るのは、メールエイリアスの扱い1点です。ここだけ性質がまったく違います。

無料版でできること・できないこと

エイリアスの決定的な違い:内蔵か、外部サービス頼みか

ここが両者のいちばん大きな違いです。

Proton Pass:アカウントを作った時点で使える

新規作成メニューを開くと、ログイン情報やカードと並んで「エイリアス」が最初から入っています。他のサービスに登録する必要も、APIキーを取ってくる必要もありません。無料で10個まで作れます。

Bitwarden:外部のエイリアスサービスが別途必要

Bitwardenにも「Forwarded email alias(転送用エイリアス)」という機能があります。ただしこれはエイリアスを自前で発行する機能ではなく、他社のサービスを呼び出す機能です。公式ドキュメントには、連携先として次のサービスが挙げられています。

  • SimpleLogin
  • Addy.io(旧AnonAddy)
  • Firefox Relay
  • Fastmail
  • Forward Email
  • DuckDuckGo

使うには、この中のどれかにアカウントを作り、APIキーを発行してBitwardenに登録する手順が必要です。公式ドキュメントにも「多くは無料プランを提供しているが、一部は有料契約が必要な場合がある」と書かれています。

ちなみに連携先の筆頭に挙がっているSimpleLoginは、2022年にProtonが買収した会社です。Bitwardenでエイリアスを使おうとすると、結局Proton系のサービスにアカウントを作ることになる、という構図が起きえます。

この差をどう評価するかは、使い方次第です。エイリアスを使わないなら、Bitwardenの機能不足にはなりません。すでにSimpleLoginやFastmailを使っているなら、Bitwardenから呼び出せる方がむしろ便利です。

一方で「登録するサイトごとに捨てアドレスを使いたい、でも管理を増やしたくない」なら、1つのアカウントで完結するProton Passの方が明らかに楽です。

▶ Proton Passを公式サイトで見る(無料アカウントで10個のエイリアスが使えます)

エイリアスの決定的な違い:内蔵か、外部サービス頼みか

有料版の料金を比べる

2026年7月26日時点で、両社の公式ページに表示されていた金額です。

プラン 表示価格 年額
Proton Pass 無料 ¥0 ¥0
Pass Plus(1人) 月 ¥374 ¥4,488
Pass Family(6人) 月 ¥624 ¥7,488
Proton Unlimited(1人・全サービス) 月 ¥1,249 ¥14,988
Bitwarden 無料 $0 $0
Bitwarden Premium(1人) 月 $1.65 $19.80
Bitwarden Families(6人) 月 $3.99 $47.88

注意点として、Bitwardenは米ドル建てです。円で見た金額は為替で動きます。仮に1ドル150円で換算すると、次のようになります。

比較 Proton Bitwarden(150円換算)
個人・年額 ¥4,488 約 ¥2,970 Bitwardenが約1,500円安い
家族6人・年額 ¥7,488 約 ¥7,182 ほぼ同額

読み取れることは2つあります。

  • 1人で使うならBitwardenの方が安い。 年1,500円ほどの差なので、パスワード管理だけが目的なら素直にBitwardenです
  • 家族6人だとほぼ横並びになる。 ここまで来ると価格では決まりません。他のサービスを使うかどうかで選ぶことになります
上の円換算は1ドル150円と置いた場合の目安です。実際の請求額は契約時の為替とカード会社の手数料で変わります。正確な金額は決済時にご確認ください。

なお、Proton Passだけを単体で契約する意味は薄いと私は考えています。Pass Plusが年¥4,488、全部入りのProton Unlimitedが年¥14,988。差額の1万円ちょっとでメール・VPN・カレンダー・ストレージが付いてくる計算です。この損得はProton Unlimitedは元が取れる?で計算しています。

有料版の料金を比べる

セキュリティ監査:ここはBitwardenの方が開示が厚い

アフィリエイトリンクを貼っている立場ですが、事実として書きます。公開されている監査情報の量と新しさは、Bitwardenの方が上です。

Bitwardenが公開している監査

コンプライアンスのページに、監査ごとの実施年・実施機関・対象がすべて列挙されていました。

実施機関 対象
2025 チューリッヒ工科大学 応用暗号グループ 暗号処理(サーバーが完全に悪意ある前提で検証)
2025 Unit 42(Palo Alto Networks) モバイルアプリ・認証アプリ
2025 Fracture Labs Webアプリとネットワーク
2024 IOActive クライアントアプリとSDK
2024 Mandiant モバイルアプリ

加えて ISO 27001 認証、HIPAA の第三者監査、GDPR・CCPA への準拠も明記されています。

Proton Passが公開している監査

Proton Pass単体の監査として公開されているのは、2023年5〜6月にドイツのCure53が実施したものです。対象はモバイルアプリ・ブラウザ拡張機能・APIで、レポートは一般公開されています。

この監査で私が評価しているのは、未解決の指摘を隠していない点です。公式ブログには、中程度の深刻度の指摘が1件(PRO-01-003 WP1)残っており、Android OS側が必要な情報を提供していないため現時点では解決できない、と明記されています。

「解決できていない問題がある」と自分から書くのは簡単なことではありません。ここはProtonの姿勢として信用できると思っています。ただし公開されている監査の頻度と新しさでは、毎年複数の監査を出しているBitwardenに分があるのも事実です。両方本当のこととして受け取ってください。

オープンソースの範囲が違う(セルフホストできるのはBitwardenだけ)

どちらも「オープンソース」を掲げていますが、公開している範囲が違います。GitHubの公開リポジトリを直接確認しました。

Proton Pass Bitwarden
クライアント(アプリ・拡張機能) 公開(GPLv3) 公開
サーバー・バックエンド 非公開 公開(AGPL-3.0)
自前サーバーでの運用 できない できる

Proton Passの公開リポジトリ群(github.com/protonpass)に並んでいるのは、iOSクライアント、Androidの認証アプリ、共通ライブラリなど、いずれも手元で動く側のコードでした。サーバーやAPIの実装は含まれていません。

対してBitwardenは bitwarden/server というリポジトリを公開しており、説明にも「API、データベース、Dockerを含むバックエンド」と書かれています。ライセンスは AGPL-3.0 です。

これが効いてくるのは、「自分のサーバーにパスワードを置きたい」という要求がある場合だけです。そこまでやる人は多くありません。ただし要求がある人にとっては、Bitwarden以外に選択肢がないレベルの決定打になります。

誤解のないように補足すると、サーバーが非公開であることはProton Passが危険という意味ではありません。パスワードは端末側で暗号化されてから送られる設計なので、サーバーは暗号文しか持ちません。ただし「その設計通りに動いていることを自分で検証できるか」という点で差が出ます。

結局どちらを使うべきか

私の整理はこうです。

Bitwardenを選ぶべき人

  • パスワード管理だけが目的。 無料版で必要十分。有料に上げても年3,000円前後
  • すでにSimpleLoginやFastmailを使っている。 Bitwardenから呼び出せるので不足しない
  • 自前サーバーで運用したい。 この時点で選択肢はBitwarden一択
  • 監査レポートの新しさを重視する。 毎年複数の監査が出ている

Proton Passを選ぶべき人

  • 使い捨てメールアドレスを増やしたい。 無料で10個、追加のアカウントなしで完結する
  • GmailやGoogleドライブから離れたい。 パスワードだけ移しても他が残る。Unlimitedなら全部まとめて移せる
  • 管理するアカウントを増やしたくない。 1つのProtonアカウントでメール・VPN・ストレージ・パスワードが揃う
身も蓋もない言い方をすると、パスワードマネージャー単体の勝負ではBitwardenが強いです。Proton Passが効いてくるのは「脱ビッグテックを一式でやる」という文脈に入ったときで、このサイトの読者はまさにそこだと思っています。逆に言えば、パスワード管理だけ解決したい人に無理にProtonを勧める理由はありません。

どちらを選ぶにせよ、いま使っていないなら、どちらかを使い始めること自体の効果が圧倒的に大きいです。ブラウザにパスワードを覚えさせたままの状態から抜けるのが先決です。

よくある質問(FAQ)

Proton PassとBitwarden、無料版で使えるのはどちらが多いですか?

有料に回している機能はほぼ同じです。内蔵の2FA認証コード、ファイル添付、緊急アクセス、漏洩監視は、どちらも無料版では使えません。実質的な差はメールエイリアスの扱いで、Proton Passは10個が内蔵されているのに対し、Bitwardenは外部サービスのアカウントとAPIキーが別途必要です。

Bitwardenの無料版でもエイリアスは使えますか?

使えますが、Bitwarden自身がエイリアスを発行するわけではありません。SimpleLogin、Addy.io、Firefox Relay、Fastmail、Forward Email、DuckDuckGoのいずれかにアカウントを作り、APIキーをBitwardenに登録して呼び出す形になります。連携先によっては有料契約が必要です。

料金はどちらが安いですか?

1人で使う場合はBitwardenです。Bitwarden Premiumが年$19.80、Pass Plusが年¥4,488で、1ドル150円換算なら年1,500円ほどの差になります。ただし家族6人プランはBitwarden $47.88、Pass Family ¥7,488でほぼ同額です。Bitwardenは米ドル建てのため、円での金額は為替で変動します。

セキュリティが高いのはどちらですか?

公開されている監査情報の量と新しさではBitwardenが上です。2024年から2025年にかけて、チューリッヒ工科大学、Unit 42、Fracture Labs、IOActive、Mandiantによる監査を公開しており、ISO 27001認証も取得しています。Proton Passで公開されているPass単体の監査は2023年のCure53によるものですが、未解決の指摘を明示している点は評価できます。

自分のサーバーで運用できますか?

Bitwardenはできます。サーバー側のコードもAGPL-3.0で公開されているためです。Proton Passはクライアント側のみ公開でサーバーの実装は非公開のため、自前運用はできません。

両方を併用してもいいですか?

技術的には可能ですが、おすすめしません。パスワードが2箇所に分散すると、どちらに入れたか分からなくなり、結局ブラウザ保存に戻ってしまいがちです。どちらか一方に寄せた方が確実です。

まとめ

確認した結果をまとめます。

  • 無料版の差はエイリアスの1点。 Proton Passは10個が内蔵、Bitwardenは外部サービスのアカウントとAPIキーが必要
  • 有料に回している機能はほぼ同じ。 2FA認証コード、ファイル添付、緊急アクセス、漏洩監視はどちらも有料
  • 1人なら Bitwarden が年1,500円ほど安い。 家族6人だとほぼ同額になる
  • 監査の開示はBitwardenが厚い。 毎年複数の第三者監査を公開し、ISO 27001も取得している
  • セルフホストできるのはBitwardenだけ。 サーバー側のコードも公開されている
  • Proton Passが効くのは「一式で移す」とき。 メール・VPN・ストレージまで含めて整理したい場合

パスワード管理だけを解決したいならBitwardenで十分です。私がProton Passを使っているのは、メールもストレージもVPNも同じアカウントで完結させたかったからで、そこに価値を感じないなら無理に選ぶ必要はありません。

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この記事の料金と機能は2026年7月26日に両社の公式ページで確認した値です。監査の情報は両社が公開しているページとブログ、オープンソースの範囲はGitHubの公開リポジトリに基づいています。Bitwardenについてはアカウントを作らず公開情報のみを確認しており、実際の使用感まで検証したものではありません。そこは分けて読んでください。

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