Signal(シグナル)は、非営利団体が運営する完全無料のメッセンジャーアプリです。LINEやWhatsAppと同じように使えて、広告もトラッキングもありません。
公式サイトに、この手のサービスとしては珍しい一文があります。
「私たちは大手IT企業の傘下ではありませんし、どこかの企業に買収されることもありません」
脱ビッグテックという観点では、これが本質です。ただし日本で使うには、避けて通れない現実的な壁があります。そこも含めて書きます。
Signalが他と決定的に違う点:会社の構造
機能の話の前に、運営の仕組みから入ります。ここがSignalの本質だからです。
Signal公式の日本語サイトには、こう書かれていました。
あわせて、こうも明記されています。
なぜこれが重要か
無料のメッセンジャーには、必ず収益源があります。広告か、データか、有料機能か、親会社の戦略上の必要性か。そのどれかが、利用者の情報の扱い方を決めます。
Signalは寄付で運営されているため、この構造がありません。「儲ける必要がないから、データを使う理由もない」という設計です。
暗号化について
公式の記載はこうです。
「オプション設定ではない」「常に」という部分が効いています。設定を確認する必要も、オンにし忘れる心配もありません。
電話番号の扱い:ここは大きく改善されています
Signalの弱点として長く指摘されてきたのが「電話番号が必要」という点でした。ここは仕様が変わっています。
公式サポートの記載を確認しました。
| 項目 | 現在の仕様 |
|---|---|
| 電話番号の表示 | 既定で他のユーザーには表示されない |
| つながり方 | 電話番号の代わりにユーザーネームを使える |
| 電話番号での検索 | されないように設定できる |
| 例外 | すでにあなたの電話番号を連絡先に保存している人には、設定に関わらず表示される |
公式にはこう書かれています。
つまり「新しく知り合う相手には番号を渡さずに済む」という改善であって、すでに番号を知っている相手から隠せるわけではありません。ここは正確に理解しておく必要があります。
登録には電話番号が要る
ユーザーネームでつながることはできますが、アカウントの登録には電話番号が必要です。完全に匿名で始められるわけではありません。
この設計をどう評価するかは分かれます。スパムアカウントの大量生成を防げる一方、電話番号を持たない人は使えません。
LINEと比べる:公開されている情報で確認した
日本で「メッセンジャーを乗り換える」と言えば、相手はLINEです。ただし公平に扱うため、私が実際に確認できた公開情報だけを並べます。
LINEヤフーが公開しているもの
LINEヤフー株式会社の公式サイトを確認したところ、次の情報が公開されていました。
- 捜査機関等からのユーザー情報開示要請に関する透明性レポート
- LINE暗号化状況レポート(2017年度〜2022年度の6本)
- 不正アクセスによる情報漏えいへの再発防止策および進捗状況
- グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会
透明性レポートのページには、次のように明記されています。
2つの違いを並べる
| Signal | LINE | |
|---|---|---|
| 運営 | 非営利団体(寄付) | 上場企業(LINEヤフー) |
| 料金 | 完全無料 (有料プランなし) |
無料+有料サービス |
| 広告 | なし | あり |
| 暗号化についての表現 | 「すべてのメッセージと通話が常に暗号化」 | 「暗号化状況レポート」で適用状況を報告 |
| 暗号化レポートの最新 | ― | 2022年度(以降は未公開) |
| 捜査機関への対応 | ― | 透明性レポートを公開 |
| 日本での利用者数 | 少ない | 圧倒的に多い |
日本で使う際の、避けられない壁
ここが本題です。技術がどれだけ優れていても、メッセンジャーは相手がいないと成立しません。
| 状況 | Signalで解決するか |
|---|---|
| 特定の相手と機密性の高い話をしたい | 解決する |
| 家族・パートナーとの連絡を移したい | 解決する(相手の同意があれば) |
| 友人全員との連絡を移したい | ほぼ不可能 |
| 学校・職場のグループ | 現実的でない |
| 店舗の予約・公式アカウント | 代替なし |
日本のLINEは、単なるメッセンジャーではなく生活インフラになっています。学校の連絡、職場のグループ、店の予約、決済。ここを全部移すのは非現実的です。
現実的な使い方
私が勧める進め方はこうです。
- LINEはやめない。 インフラとして使い続ける
- 「見られたら困る話」だけSignalに分ける。 家族、パートナー、仕事の機密、健康の相談
- 相手は1〜2人から始める。 全員を説得しようとしない
相手を誘うときのコツ
「プライバシーが」と説明すると、たいてい引かれます。実際に効くのは次のような入口です。
- 「広告が出ないから見やすい」
- 「消えるメッセージが便利」(時間で自動削除される機能があります)
- 「パソコンでも使える」(Windows・Mac・Linux版があります)
始め方と、対応環境
公式サイトに記載されていた対応環境です。
| 種別 | 対応 |
|---|---|
| スマートフォン | Android / iPhone・iPad |
| パソコン | Windows / Mac / Linux |
| 日本語UI | 対応(公式サイトも日本語) |
| 料金 | 完全無料 |
手順
- スマホにSignalアプリを入れる
- 電話番号で登録する
- 設定 → プライバシー → 電話番号 で、電話番号の表示と検索の設定を確認する
- 必要ならユーザーネームを作る
- パソコンでも使うなら、デスクトップ版をスマホと連携させる
公式サポートによると、電話番号のプライバシー設定は「設定 → プライバシー → 電話番号」から管理できます。ここは登録直後に一度見ておくことをおすすめします。
メッセージの次に来るもの
Signalに移すと、ひとつ気づくことがあります。
会話は守れても、他のものは何も変わっていないということです。
| データの種類 | Signalで守れるか |
|---|---|
| 友人・家族との会話 | 守れる |
| メール | 守れない |
| クラウドに置いたファイル | 守れない |
| 閲覧履歴 | 守れない |
| 保存したパスワード | 守れない |
特にメールは、契約・請求・医療・行政・仕事のやり取りが集まる場所です。会話よりも記録として重く、しかも長期間残ります。
当サイトでは、何から手を付けるべきかを脱Google完全ロードマップに整理しました。順番を間違えると必ず折れるので、そちらもあわせてどうぞ。
ブラウザから始めたい場合はBraveブラウザとは?、メールの実態についてはGmailはGoogleに読まれている?にまとめています。
よくある質問(FAQ)
Signalは無料ですか?
完全無料です。有料プランそのものが存在しません。運営は独立非営利団体で、公式サイトに「大手IT企業の傘下ではありませんし、どこかの企業に買収されることもありません」「開発は皆さまからの支援や寄付によって支えられています」と明記されています。広告もトラッキングもありません。
電話番号を知られずに使えますか?
新しく知り合う相手には知られずに済みます。既定では電話番号がSignal内の誰にも表示されず、ユーザーネームでつながれます。ただし公式が明記しているとおり、すでにあなたの電話番号を連絡先に保存している人には、設定に関わらず表示され続けます。また登録そのものには電話番号が必要です。
LINEと比べてどちらが安全ですか?
公開情報から確認できる違いを並べると、Signalは「すべてのメッセージと通話が常に暗号化される」と明記しているのに対し、LINEは「LINE暗号化状況レポート」で適用状況を年次報告する形をとっていました。なおそのレポートは2017年度から2022年度までの6本で、以降は公開されていません。ただしLINEヤフーは捜査機関への対応について透明性レポートを公開し、盗聴や検閲には一切応じないと明言しています。
LINEをやめる必要がありますか?
ありません。日本ではLINEが生活インフラになっており、学校や職場の連絡、店舗の予約まで含めて全部移すのは非現実的です。現実的なのは「LINEは使い続けて、見られたら困る話だけSignalに分ける」という使い分けです。
パソコンでも使えますか?
使えます。公式サイトの記載によるとWindows・Mac・Linuxに対応しています。スマホと連携させて使う形です。LINEと違い、Linux版があるのも特徴です。
相手がSignalを使っていない場合はどうなりますか?
やり取りできません。ここがメッセンジャーの本質的な制約で、Signalの技術がどれだけ優れていても変わりません。まず家族やパートナーなど1〜2人から始めて、必要な相手だけ誘うのが現実的です。全員を説得しようとすると挫折します。
まとめ
公式サイトを確認した結果をまとめます。
- Signalは非営利団体が運営する完全無料のメッセンジャーです。 有料プランも広告もありません
- 「大手IT企業の傘下ではなく、買収されることもない」と公式に明記されています。 ここが構造的な強みです
- すべてのメッセージと通話が常に暗号化されます。 設定でオンにする必要がありません
- 電話番号は既定で他のユーザーに表示されません。 ただし既に番号を知っている相手には表示され続けます
- Windows・Mac・Linux版があります。 日本語UIにも対応しています
- 最大の壁は「相手がいるかどうか」。 技術ではなく普及率の問題です
LINEをやめる必要はありません。日本ではインフラとして機能しているので、無理に移すと生活が回らなくなります。
現実的なのは「見られたら困る話だけSignalに分ける」という使い分けです。家族やパートナーとの1対1から始めれば、説得のコストもほとんどかかりません。

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